女と男と悪魔と神と
一人の女性は言いました。
『この世の中、苦しいことばかり。
この苦しみは、いつまで続くのかしら』
それは、絶望の声でした。
一人の男性は言いました。
『この世の中、楽しいことばかり。
もっと楽しいことはないだろうか』
それは、欲望の声でした。
ある神様が、その二人を見て言いました。
『二人とも、理由は違うけれど、どちらも不幸を背負っている』
ある悪魔が、その二人を見て言いました。
『二人共、やりたいようにすればいいさ』
ある日、女性と男性は出会いました。
女性は男性に言いました。
『能天気な人。大嫌いよ』
男性も、女性に言いました。
『暗い奴だな。僕も大嫌いだね』
ある神様が、その二人を見て言いました。
『お互い、まだ出会ったばかり。
もっとお互いを、理解し合わないと』
ある悪魔が、その二人を見て言いました。
『もっともっと、お互い嫌いあえばいいんだ』
それから、しばらくたったある日
また、女性と男性は出会いました。
女性は、男性に訊きました。
『どうしてこの前は、私のことを大嫌いと言ったの?』
男性も、女性に訊きました。
『君こそ、なぜ僕のことが大嫌いなんだ?』
ある神様は、そんな二人を見て言いました。
『お互いが、お互いを知ろうとしている。すごくいいことだ』
ある悪魔は、そんな二人を見て言いました。
『また、喧嘩すればいいんだ』
さっきの男性の質問に、女性が答えました。
『思ったことを言っただけよ』
さっきの女性の質問に、男性が答えました。
『僕のだって、思ったことを言っただけよ』
ある神様が、その二人を見て言いました。
『素直に本音をぶつけるのは、いいことだ』
ある悪魔が、その二人を見て言いました。
『このまま、喧嘩になるかな』
男性の答えを聞いた後、女性は少し考えて言いました。
『でも、少し言いすぎたと思うの
ごめんなさい 』
女性の答えを聞いた後、男性は少し考えて言いました。
『僕も、少し言いすぎたと思うんだ
ごめんな 』
そして、ある神様が二人を見て言いました。
『よかった。お互い理解し合えて、本当によかった』
そして、ある悪魔が二人を見て言いました。
『ちぇっ、もう喧嘩しないのか』
謝った後、女性は男性に言いました。
『私ね、こんなにはっきりと本音を口にしたのは初めてだわ。
ずっと、言いたいことを言えなくて、苦しかったのかもしれない』
謝った後、男性は女性に言いました。
『僕も、本当のことを言えて、すっきりしたんだ。
いつも楽しいことばかりだったけど、君と話せたことが今までで一番楽しかったんだ』
ある神様とある悪魔が、最後にその二人を見たのは、仲良く手をつないで歩いている姿でした。